収容所の食堂で飯を食いまくっています。
飯がうまいんです。
僕ほど米ひと粒おかずひとかけらごとに目を閉じて味わって食っている収容員は他にいないはずです。
僕はよく思うんですが、〈選べる楽しさ〉というものがあると同様に、〈選べない楽しさ〉というものもあるんです。
大げさに言ってしまえば〈自由の喜び〉というものと同様に、〈不自由の喜び〉というものもあるんです。
まあ僕のこの場合の話は非常にくだらない話で食事のメニューのことなんですが、僕はいつも自分が食べたいと思ったものではないメニューを選ぶんです。
それも結局は「自分が食べたくないものを選ぶ」ということで〈選べる楽しさ〉になるのかもしれませんが、これが食べたい、これにしよう、やはりこれはおいしい!という喜び よりも、これを食べる気分じゃない、でもこれにしよう、おや、これもなかなかおいしいじゃない!という喜びのほうを、僕は選ぶんです。
そしてそのささやかな発見を歯で噛みしめ、意想外の収穫を味覚で感じると、脳内では穏やかなシンフォニーが響き渡るんです。
そのシンフォニーはあらゆる予定調和で退屈な道のりを、ほんのごくわずかではあるのですが、刺激し、楽しくさせるんです。
人生ってもんは、わからないです。
でも、楽しいものです。
食後、そんなくだらないことを考えながら、食堂の前のベンチでタバコをふかすんです。
ええ、僕は相変わらずです。
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